些細なことに神宿る・・・・・・・末井昭
編集部; この程のご出版おめでとうございます。末井さんが日記を書き始めたのは赤瀬川原平さんの新聞小説「ゼロ発信」に触発されたのがきっかけとお書きになっていらっしゃいますが・・・
末井; そうですね。「ゼロ発信」は小説という形をとっているんですが、日記のような文章なんですね。新聞だからリアルタイムみたいに思えて、それがすごく面白かったんです。日記かなと思っていたら突然小説みたいになって何日か続いたり、また突然話題が変わったり、自由自在というか、新聞というメディアをうまく使ってるなぁと思いました。毎日読むのが楽しみで。
編集部; 私小説のようなものですか?
末井; 近いけど少し違いますね。僕は小説を読むのが苦手で、小説は嘘という前提があるから、読む前にくじけてしまうんですね。でも「ゼロ発信」は、日記みたいに日常の話から始まるからスーッと入っていけるんです。こういう文章書きたいなぁって思うようになって。
編集部; 新聞掲載なら毎日更新ですね。
末井; 1週間分をまとめて渡すみたいですけど、そのうち間に合わなくなって、締め切りギリギリで次の日の分を送ったりする日もあって、それをまた原稿に書いたりしていて、書いている状態も伝わってくるので面白かったですね。夫婦喧嘩のことが書かれたりすると、読んでいるみんなが心配して、明日はどうなるんだろうと思ったり、ワクワクさせるんですね。そのころ『パチンコ必勝ガイド』のホームページがリニューアルになるっていうんで、僕の日記のコーナーを作ってもらったんです。新聞はリアルタイムに近いけど、少しタイムラグがあるわけでしょう。でも、インターネットなら本当にリアルタイムに書けるわけだから、面白くなるんじゃないかと思って。
編集部; そのころうつ状態だったとおっしゃっていましたが。
末井; 奥さんとうまくいってなかったのが原因だったんですけど、初老性うつ病かと思って、うつ病の本なんか読んだりしてましたね。なんにもやりたいことがないみたいな。そういう無気力な自分が、奥さんをイライラさせているんじゃないかと思って自己嫌悪になっていましたね。日記を書き始めて、だんだん元気になっていくんですけど。だから、最初のころはウツウツした状態だったんで、日記がやたらと長いんです。どうでもいいようなことをジクジク書いていますね、今読み返してみると。
編集部; 文中に猫のねず美ちゃんと奥さんの美子さんがよく登場しますが。
末井; ねず美ちゃんが来たのは2002年の10月ですから、それからですね、しょっちゅう登場するようになったのは。犬と比べると犬好きの人に怒られるんですが、犬は主従関係がはっきりしているんですけど、猫は人間を召使いだと思っているときがあるんですね。ニャーと鳴いてなんか命令したりするわけ。でも、元気がないときは慰めてくれたり、撫でたりしているとフッと向こうに行ったり、こっちの思い通りにならないところが面白いんじゃないですか。人間に近いみたいな。
編集部; 奥さんは神蔵美子さんという写真家で、すでに「たまもの」という写真集を筑摩書房から出版され、たいへん好評だったわけですが、今回は表現者として共同製作ということですね。
末井; 写真を170枚入れてもらいました。日記だと記念写真みたいな写真がよく入っているんだけど、それじゃあ面白くないっていうことで、写真を選ぶのも結構苦労したんです。なるべくそのときの雰囲気が伝わるような写真で構成しました。写真が入って面白くなったと思います。
編集部; 日記から末井家の家族愛は十分に想像できます。それもテーマのひとつですか?
末井; 自分の中で、美子ちゃんとの関係が一番大事なことですから、当然日記もそのことが多くなって来ますね。喧嘩したことを日記に書いていると、なんだか誰かに言いつけているみたいな気持ちになって、やめたことも結構あります。やっぱり、人に見せる日記は、書けないことも多くなりますね。夫婦愛っていう言葉でくくると簡単なんだけど、1000組の夫婦がいれば、1000通りの愛の形があると思うんです。まぁ、このごろはお互い浮気したりしている夫婦も多いから、夫婦愛なんて言うと笑われるかもしれませんが、やっぱり一番大切なのは夫婦愛だと思っているんで、これを実践するのがテーマですね。「一人の女を愛しきることが男の真の幸せ」という、イエスの方舟の千石さんの言葉を信じていますから。
編集部; それと、日常的なことが多いですね。
末井; 日記を書き始めるときに、なるべく些細なことを書こうと思っていたんです。有名な人に会っただとか、こういう仕事をしただとか、そういうのはどうでもいいと思って。それよりも、洗濯物をたたむことだとか、膝が痛いことだとか、ホントにどうでもいいようなことのほうが、いまは絶対面白いんです。
編集部; 本になるのは3年間の日記と聞きましたが、どのくらいな分量になるんですか?
末井; 400字詰めの原稿用紙に直すと、1620枚ぐらいになるそうです。写真も入れて全部で912ページ。枕にもなりますよ。1年、2年じゃダメで、4年じゃ長すぎる、3年分でちょうど良かったと思います。3年だと、その間に重層的にいろんな物語があるんです。パチプロの田山幸憲さんのこととか、イエスの方舟の千石さんのこととか、もちろん美子ちゃんのこととか、亡くなった人も多いし。
編集部; 読者層に特徴はありますか?
末井; 女性の人が多いですね。でも、本当に読んでもらいたいのは、僕と同世代の男性なんですけど。家庭を犠牲にして、仕事、仕事でこれまでやってきたのに、気が付いたら自分がリストラされそうになっている、奥さんにはあまりかまわなかったから、すっかり心は離れている、子供はグレている、さて、あと10年か20年、どうやって暮らそうか、みたいな人に読んでもらいたいですね。少しは楽になるんじゃないかと。
編集部; ありがとうございました。最後に一言締めのコメントをおねがいします。
末井; 日記を読んでいただいたみなさんに感謝します。誰かが読んでくれていると思うから続けられたのだし、続けたから自分の精神状態がすごく良くなったし、本にもなるし、今度は逆に、本を読んでくれる人が楽になってくれたら嬉しいと思います。あと、「仔細ことに神が宿る」みたいなことを感じていただけたらいいと思います。
編集部; 4月20日にもう一つ末井さんのお書きになった「スエイ式人生相談」という本も発売されるそうですが・・・
末井; こっちのほうは『月刊パチンコ&パチスロ・ニュース』と音楽雑誌の『バリヤバ』で連載した人生相談をまとめたものです。
編集部; たとえば、どういう相談がありますか。
末井; うーん、たとえば、親にもらった体に入れ墨を入れてもいいかとか。
編集部; 末井さんの回答はどんな?
末井; 親からもらったのは心の入れものだから、心が良くなるんなら入れ墨でも整形でも性転換でもしたほうがいいと。どうせ入れ墨を入れるんなら、仁王様とか虎とか蛇とか、人を威嚇するものはやめて、キティちゃんみたいなカワイイものとか、地下鉄路線図みたいな役に立つものを入れなさいって。乗り換えに迷ってるお年寄りに、もろ肌脱いで見せてあげたら喜ばれるでしょう。
編集部; まさにスエイ式人生相談ですね(笑)。ありがとうございました。
「絶対毎日スエイ日記」四六判・912頁・定価2500円+税
(アートン・電話03−5459−2751)
「スエイ式人生相談」四六変形判・160頁・予価800円+税
(太田出版・電話03−3359−6262)
神蔵美子写真集「たまもの」B5判・206頁・定価2800円+税
(筑摩書房・電話048−651−0053)
<管理人からのコメント>
いつも達人日記を読んでいただいてありがとうございます。
「絶対毎日スエイ日記」出版記念として今回P−LANDMARKD読者に特別プレゼントを用意しました。
「絶対毎日スエイ日記」「スエイ式人生相談」を各先着10名様合計20名様にプレゼントします。
本の名前を指定してメールにてご応募ください。
info@p−landmark.comまで。
当選は賞品発送をもって発表に替えさせていただきます。なお、発送は出版物発売後とさせていただきます。
(以下は末井さんが「パチンコ必勝ガイド」に掲載したコメントを転用したものです。)
この日記が『絶対毎日スエイ日記』という本になって4月20日に発売になります。
思い起こせば4年前、赤瀬川原平さんの新聞小説「ゼロ発信」に触発されて書き始めたこの日記ですが、正直言って4年も続くとは思わなかったです。この日記を書き始めて変ったことは、気持ちが楽になったことです。悩んだりウツウツしたりする日も、日記を書くとすごく楽になるんですね。それは、誰かが読んでくれているからと思うからで、人に見せない日記を書いても、おそらく気持ちは楽にならなかったと思います。この場を借りて、この日記を読んでいただいている皆さんにお礼申し上げます。
でもって、その4年間の日記の3年分をまとめた『絶対毎日スエイ日記』という本が、4月20日にアートンから出版されることになりました。400字詰め原稿用紙に直すと1620枚ぐらいになるそうで、それに加えて神蔵美子の写真170枚が入ることになり、912ページという分厚い本になります。枕にもなります。買っていただけると幸いです。
それから、ほとんど同時に『スエイ式人生相談』という本が、太田出版から発売になります。こっちのほうは、『月刊パチンコ&パチスロ・ニュース』と『バリヤバ』で連載した人生相談をまとめた本で、自分で言うのもナンですが、かなり面白いし、悩んでいる人は楽になると思います。こちらのほうも、お買い上げよろしくお願い申し上げます。
http://test.p-landmark.com/R0011/1.aspx